2011年9月29日木曜日

東京都制とは

現在の東京都の地域に存在していた東京府と現在の東京23区(当時の東京市は35区)の地域に存在していた東京市を廃止し、新たに東京都という広域行政機関かつ基礎的地方公共団体を設置することを定めた日本の法律である。この法律は1947年の地方自治法の施行に伴い廃止された。1943年(昭和18年)7月1日に東京都制施行。東京府と東京市を廃止し、東京府の存在していた地域に東京都を設置した。東京府と東京市は廃止されたが、ともに条例等を東京都に引き継いだ。 東京都制の目的は「帝都たる東京に真の国家的性格に適応する体制を整備確立すること」、「帝都に於ける従来の府市併存の弊を解消し、帝都一般行政の、一元的にして強力な遂行を期すること」、「帝都行政の根本的刷新と高度の効率化を図ること」にあった。太平洋戦争下における、いわゆる戦時法制のひとつである。東京都制による東京都の長は、官選による東京都長官である。議決機関として東京都議会と東京都参事会を設置した。

東京都長官以下、統治機構の官制については天皇の大権に属するため法律である東京都制ではなく勅令である東京都官制(昭和18年6月18日勅令第503号、昭和18年7月1日施行)によって定められている。従前との相違点は、旧東京市の範囲に設置した区が東京都の直轄になっている点である。区の執行機関である区長は従前は市の有給吏員として東京市において選任されていたが、東京官制によって東京都長官が官吏である書記官をもって選任することに改められた。区は従前どおり法人格をもった自治体としての性格を一応は保ったが、都との関係について様々な合理化が図られ、都の強力な監督下に置かれた。多摩地域や島嶼部の市町村が基礎的地方自治体であることは従前と変わりがないが、これらに対しても都の監督が強化された。戦後、1946年9月に市制(明治44年法律第68号)・町村制(明治44年法律第69号)、府県制(明治32年法律第64号、この改正により道府県制と改称)とともに東京都制も改正された。

この改正により区の自治権が強化されて区長は区長公選制により公選とされた(ただし、1952年~1975年の間は地方自治法改正によって特別区の独立性の制限と都への従属の強化が図られたため、非公選の選任制となる)。同時に東京都長官にも公選制が導入された。1947年4月に実施された最初の東京都知事選挙はこの改正東京都制によるものであり、その時点では東京都長官を選出するものとして実施された。すなわち最初の公選都知事とされる安井誠一郎は4月に最後の東京都長官として選出・就任した後、5月3日の地方自治法施行によって東京都知事に移行したものである。東京都制は地方自治法(昭和22年法律第67号)附則第2条により、1947年5月3日の日本国憲法(昭和21年11月3日憲法)施行に伴い、同日廃止された(同条但書により、東京都制第189条乃至第191条、第198条はなお効力を有する)。また、昭和22年法律第67号附則第2条但書の効力も、昭和39年7月11日法律169号附則第2条及び昭和49年6月1日法律第71号附則第2条、平成10年5月8日法律54号附則第2条、平成11年7月16日法律第87号附則第15条により、効力を再び制限された。

現在の東京都は東京都制ではなく、地方自治法に基づいている。東京都の名称は同法第3条第1項の「地方公共団体の名称は、従来の名称による」という規定に基づくものであるが、特別区の存在を除いて、同法上は他の道府県との違いはない。東京都制下との違いは、首長である東京都知事及び特別区の区長・区議会議員が公選制になるなどである。東京都制、道府県制、市制及び町村制は、これを廃止する。但し、東京都制第189条乃至第191条及び第198条の規定は、なお、その効力を有する。地方自治法附則第2条ただし書によりなお効力を有する旧東京都制第189条から第191条まで及び第198条の規定は、改正後の地方自治法第281条第2項第一三号から第二〇号までに掲げる事務及び第281条の3第2項に規定する特別区の区長の権限に属する事務に関しては、その適用はないものとする。地方自治法附則第2条ただし書の規定によりなおその効力を有することとされる旧東京都制(昭和18年法律第89号)第191条の規定は、法律又はこれに基づく政令により市に属する事務で改正後の地方自治法第281条第2項の規定により特別区が処理することとされているもの並びに同法第281条の3第1項の規定により特別区の区長が管理し、及び執行することとされている事務に関しては、その適用はないものとする。

地方自治法附則第2条ただし書の規定によりなおその効力を有することとされる旧東京都制(昭和18年法律第89号)第191条の規定は、法律又はこれに基づく政令により市に属する事務で第1条の規定による改正後の地方自治法第281条第2項の規定により特別区が処理することとされているもの並びに同法第281条の7第1項の規定により特別区の区長が管理し、及び執行することとされている事務に関しては、その適用はないものとする。新地方自治法附則第2条ただし書の規定によりなおその効力を有することとされる旧東京都制(昭和18年法律第89号)第191条の規定は、法律又はこれに基づく政令により市が処理することとされている事務で新地方自治法第281条第2項の規定により特別区が処理することとされているものに関しては、その適用はないものとする。「東京都制」構想そのものは、明治時代より存在しており、1895年には東京府を廃止して東京15区を「東京都」として独立させて政府の支配を強化し、他の地域を多摩県として再編成させる「東京都制および多摩県設置法案」が提出されたが、帝国議会(第9議会)や東京市民の反感を買って廃案となり、野村靖内務大臣は責任を取って辞任している。

東京市は、旧東京府東部に1889年(明治22年)から1943年(昭和18年)までの間に存在していた市である。市域は現在の東京都区部(東京23区)に相当する。1878年(明治11年)7月22日、東京府は府下を区と郡に分かち、府税収入の多い地域を吟味選定のうえ、郡区町村編制法第2条の定めるところに従って旧幕時代の地称を付し麹町区・神田区・浅草区以下の東京15区を設けた。同時に、市街地に隣接する旧街道宿場および農村部に荏原郡・東多摩郡・南豊島郡・北豊島郡・南足立郡・南葛飾郡の6郡を置いた。1888年(明治21年)、東京市区改正条例公布。政府の機関として東京市区改正委員会(委員長・芳川顕正元東京府知事)が置かれる。1889年(明治22年)5月1日、前月施行の「市制・町村制」に基づき東京府は府下に東京市を設け旧15区の区域をもって市域となして、区部の財産管理を移掌した。東京市の市制は、同3月公布法律12号「市制中東京市京都市大阪市二特例ヲ設クルノ件」(市制特例)によって一般市とは一部異なる変則的な市制だった。

東京府知事および府書記官が市長を兼務しており、市役所も市職員も置かれなかった。その一方で従来の15区はそれぞれ単独で区会(議会)を持ち、東京市の下位の自治体とされた。