2011年10月15日土曜日

茨城は県別で全国4位であった。

また八丈方言と関東の海岸部との共通性は多いのだが他の都県との関係は薄いことも解かった。また遠く離れた九州方言との意外な共通性が見られた。八丈方言は東北方言に最も近い一方で、東北の南端の宮城・福島より茨城の方が近いと言うことになる。橘正一は、この理由として古語が残っているか否かによると推論している。言い換えれば茨城には統計的に古語が良く残っていることが証明されたことになる。以上から、茨城方言すなわち東関東方言は、東北方言に近いだけでなく、関東圏では最も古い言葉を残していると言えよう。茨城弁の特徴は、東関東方言と一致する。東関東方言は、茨城県の大半と、栃木県の南西部を除く地域、千葉県の北部の一部で話されている日本語の方言群である。関東各県の方言は、時代の経過とともに、東京・神奈川の都市部の方言は、著しい速さで変化したと見られる。それが現代の方言分類にも現れている。一方、各地の方言のうち、動植物や生活文化・風習に関る語彙は種々雑多で使用範囲が限られる。

また、関東各県には各々独特の語彙が存在する。さらに関東以外の周辺域の影響を受けた言葉がある。それらを除いた各地の古い方言は、実は関東圏にほとんど共通に見られるものである。東京西部の青梅市・多摩地域などの方言や神奈川西部の方言は茨城弁に驚くほど良く似ているのである。方言の比較は時間軸が作用して今ではなかなか難しく、現代ではことさらに茨城弁が特別に扱われている傾向があるが、茨城方言は関東では決して特別な方言ではないことが解かる。一方、動植物方言の中に意外な共有性があることもある。これは、方言の発生の図式にも関ることであり、現代の若者言葉の発生と同じであり時代が生んだ言葉が残ったか否かに関るとも思える。こうして見た時、それでは茨城弁とは何かという事になる。これこそが茨城弁の特徴とも言え、またこれは東北方言の特徴と一致する。言い換えれば、関東方言に東北方言の要素が入ったものが茨城方言と言えよう。一方、茨城あるいはその周辺地域が起源と思われる語彙がある。

例えば、「べ」「べー」が変化した勧誘・推測の助動詞「ぺ」「ぺー」が上げられる。さらに霞ヶ浦周辺で使われる同じ意味の「へ」「へー」は、文献では1991年の調査報告(1991年玉造町史調査で口頭報告)で初めて現れるが、土浦市では、少なくとも昭和30年代にはすでに使われていた。ただしこれは、単純に「ぺ」「ぺー」が変化したと思われるほか、終助詞「や・よ」が変化した「い・え」に置き換えられた可能性もある言葉でもある。もう一つ茨城にしか無い言い方がある。関東圏では一律に殴ることを「ぶっとばす」と言うが、茨城では「ぷっとばす」とも言う。一般に文中のバ行音は促音化した言葉に続く場合半濁音化するが、語頭で半濁音化するのは茨城弁だけである。井上史雄がネット上に公開している『新方言辞典稿 増訂版』(新方言を中心に主に現代の若者語がどのように発生したかを解説するサイト)では、江戸言葉が単に上方語をベースにしながら漫然と生まれたのではなく、周辺地域の方言の影響を強く受けながら生まれた言葉であったと同じように、現代の若者言葉の発生のプロセスが丁寧に解説されている。

関東内の周辺域は明治以降標準語化の波に押されたが、一方では都心の言葉も周辺域の言葉の影響を数多く受けていることが解かる。それには茨城弁も一役買っている。現代の標準語は過去の長い歴史を背負いながら今も成長を続けており、不思議と思える若者言葉のうちの僅かなものは、いずれ将来の標準語となる可能性を持っている。例えば「違う」とは動詞であるが、現代日本語にはこれに当てられるべき形容詞形が無い。そのため、茨城では古くから使っていた「ちがくなる」という方言は、現代語の欠陥を補う言葉と言っても良く、今では都心の若者達が使うようになっている。つまり「ちがくなる」とは特殊形の形容詞と思ってさしつかえなく、「痛くなる」等と同じ表現なのである。近年発表された過去の文献の総編纂としての『分類神奈川方言辞典』に示された神奈川方言は、同じく古い文献による茨城方言とことごとく一致する。これは、東北方言をベースにした東関東方言とは別に、関東方言のベースとしての方言群の存在を感じさせる。

例えば「椀」を「わんこ」と言うのは、岩手の「わんこそば」に代表されるが、これは勿論茨城にもあり、神奈川の一部地域にも残る方言である。これから、関東方言には東日本方言としての東北方言と同じ古い言語文化があったことを思わせ、西関東方言はもともとは現代の東北方言と同じ方言郡をベースにされている可能性を思わせる。これは、言い換えれば、関東の方言は、古くから東北方言と縁が深く、互いに長く影響しあいながら成立した可能性がある。標準語は明治維新以降、国策として当時の山手言葉を基に作られたもので、特にラジオ・テレビの普及に伴い、現在の茨城弁に強い影響を与えてはいるが、明治以前の茨城弁の成立には関係ない。茨城方言に対して、次項のような研究報告は過去に無い。新説である。 茨城には、アクセントが無いのは諸学者の総意である。しかし、なぜそうなるのか、実際のイントネーションは尻上がりというだけで、新たな分析は過去に無かった。以降は、40年前の茨城弁話者が、標準語圏で生活したときに気が付いた、茨城方言の型を論じたものである。

茨城弁を話す人達が、いくら頑張っても茨城の領域を出られないと同じく、茨城弁を知らない人には茨城弁の本質やニュアンスは語れないのです。平板型アクセント:単語レベルでは、飴・雨(あめ)、箸・橋・端(はし)、柿・牡蛎(かき)、海・膿(うみ)、2時・虹(にじ)等全て平坦に区別無く発音される。東関東方言の特徴。イントネーション:会話になると、語尾が高めに発音されることが多いため、「水戸の尻上がり」などと呼ばれる。実際は最後に上がって下がるイントネーションになることが多い。一方、単語レベルでは平板だった単語は、文章になるとアクセントが発生することがあるがそれには一定のルールが見出せない。単語のアクセントが会話のイントネーションに支配されるのである。標準語の会話のイントネーションは、誰が話してもほぼ一定の形をとるが、茨城方言のイントネーションは、概ね五つのパターンに分類できる(尚、以下の名称は学会等で認知されたものではなく、筆者が仮につけた名称である)。

 有声音化:標準語ではi、uが無声子音(k、s、t、h、p)に挟まれた場合や、無声子音の後で語末に来た場合は、母音の無声化が起こり、声門の振動が起こらない発音になる。例えば「行きたくない」の「き」、「聞くとき」の「く」、「遣らして」の「し」、「増す時」の「す」、「ナチス」の「ち」は無声化する。小学校の国語の時間ではこのルールは教育対象になっていない。ところが関西でははっきりと無声化せずに発音される。日本語を東西に分ければ、母音の無声化は東部方言の特徴の一つとして位置づけられるものである。ところが、カ行音・タ行音は茨城ではしばしば濁音化するため、無声化しないことがある。東関東方言の特徴。清音化:濁音化は東北弁にもあり東関東方言の特徴でもあるが、茨城には、現代標準語をベースにすれば清音化する言葉が多い。八丈方言にも見出すことができる。主に「じ・ず・ど」が清音「ち・つ・と」になったりする。この場合の「ち・つ」は関西弁に似て有声音で発音されることが多い一方、濁音が無声音発音されたときに清音化するとも考えられる。

「ざ・ぜ」に限って清音化しにくい理由は無声音にならないためだろう。預かるを「あつかる」、同じを「おなし・おなち」、三時間を「さんちかん」、短いを「みちかい・みしかい」、静かを「しつか」、ほとんどを「ほとんと・ほどんと」、よっぽどを「よほと・よっぽと」などと言う。尚「短い」の最も有力な語源は、「身近し」であり、「殆ど」の語源は「ほとほと」で、清音化したのではなく語源を残した方言とも言える。「水海道」(現・常総市)が「みつかいどう」、下妻が「しもつま」など、地名にもこの傾向が反映されている。茨城の文法は基本的に標準語と同じである。しかし、茨城には現代標準語と異なる助詞や助動詞があり、これらは主に古語や近世語に由来するもので茨城方言ではないことが多い。また現代標準語の言い方とそれらが共存して使われるのも茨城方言の特長とも言える。また、現代標準語では可能動詞が一般化しているが、茨城では古語または文語の受身・可能・自発・尊敬の助動詞「れる・られる」が使われる。このうち自発形はやや特殊で、「行く」の自発形の「いけられた」は、「いつのまにか行けてしまった」というニュアンスを含む。これは栃木でも同じである。